ストラテジ系

DXとは何か — IT化との違いと行政DX

導入

マイナンバーカードひとつで行政手続きがオンラインで完結したり、銀行に行かなくてもスマホで口座開設できたり――こうした変化は単なる「IT化」ではなく、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の一部として語られることが多くなっています。DXという言葉は試験でも頻出ですが、IT化との違いをはっきり理解できている人は意外と少ないのではないでしょうか。

なぜ重要か

ITパスポート試験のストラテジ系では、DXは毎回必ずといってよいほど出題されるテーマです。「DXの説明として最も適切なものはどれか」という定義問題に加え、「この企業の取り組みはIT化かDXか」という事例判定問題もよく出題されます。IT化との区別を正確に説明できるかどうかが得点の分かれ目になっています。

実務の場でもDXは避けて通れないキーワードになっています。経済産業省が2018年に「DXレポート」で警告した「2025年の崖」問題(老朽化したシステムが足かせとなり企業のデジタル対応が遅れるリスク)は、多くの企業がいま直面している課題です。行政DXの文脈でも、マイナンバー活用や電子申請の拡大が進んでおり、社会人として基礎知識として押さえておく意義が高まっています。

くわしく知ろう

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセス、さらには組織文化そのものを変革し、新たな価値を生み出すことを指します。「デジタル化」や「IT化」と混同されることがありますが、この2つは本質的に異なる概念です。

IT化(デジタイゼーション)は、これまで紙や人手で行っていた作業をコンピュータやシステムに置き換えることを意味します。たとえば、紙の申込書をPDFに変換したり、手書き台帳をExcelで管理したりする行為がIT化にあたります。業務のやり方は変えずに、道具だけをデジタルに切り替えるイメージです。

一方でDXは、デジタル技術を活かして「仕事のやり方」や「提供する価値」そのものを根本から変えることを目指します。たとえば、申込書をデータ化するだけでなく、そのデータをもとにAIが審査を自動化し、顧客への提案までを変革するといった取り組みがDXとして知られています。つまり「手段のデジタル化」ではなく「変革のためのデジタル活用」というのがDXの本質です。

この概念を最初に提唱したのはスウェーデンのウメオ大学教授エリック・ストルターマンで、2004年に「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義しました。日本では経済産業省が2018年に「DXレポート」を発表し、企業へのDX推進を訴えたことで急速に注目を集めるようになっています。

具体例で理解する

たとえば、行政手続きにおける「行政DX」は、政府が推進するデジタル化の代表例です。マイナポータルを通じた確定申告や子育て支援の申請がオンラインで完結するようになったのは、単に紙をデータに替えたIT化ではなく、窓口に足を運ばなくてよい新たな行政サービスの在り方を実現したDXにあたります。一方、企業の例では、既存の小売業者が店舗販売にECサイトを追加しただけであればIT化ですが、購買データをもとに個人の好みに合わせた商品を提案し、在庫管理から物流まで一体で最適化する仕組みを構築した場合はDXと呼べます。

試験での出題パターン

【パターン1:DXの定義を問う問題】

「DXの説明として最も適切なものはどれか」という形式で、4つの選択肢の中からDXの本質を正確に表した文を選びます。誤答選択肢には「紙の書類をPDFに置き換えること」「クラウドサービスへ移行すること」など、IT化の説明が紛れ込みます。「変革・新しい価値・ビジネスモデルの変革」というキーワードが含まれている選択肢を選ぶ練習をしておくと効果的です。

【パターン2:事例がIT化かDXかを判定する問題】

「ある企業の取り組みとして最も適切に表したものはどれか」という形式で、具体的なシナリオを読んでIT化・DX・BPRなどに分類します。判断のポイントは「業務のやり方・提供価値そのものが変わったか(DX)」「ツールを替えただけか(IT化)」という視点です。シナリオの中に「根本的に変えた」「新たなサービスを生み出した」という表現があればDXと判断できます。

よくある間違い・紛らわしいポイント

【DXとIT化の混同】

最もよくある誤りは、クラウド移行・ペーパーレス化・業務システム導入をDXと呼んでしまうことです。これらは道具や手段をデジタルに替えているだけで、業務やサービスの在り方そのものは変わっていない場合はIT化にとどまります。「何が変わったか(ツール?それともやり方・価値?)」を問うと区別しやすくなります。

【BPRとDXの混同】

BPR(Business Process Reengineering:業務プロセスの抜本的再設計)は、業務フローを根本から見直して効率化する経営手法です。DXはデジタル技術を活用して変革することを特に指すため、デジタル技術が前提にない業務再設計はBPRと呼びます。「デジタル技術が変革の中心にあるか」がDXとBPRを区別するポイントです。

【デジタイゼーションとデジタライゼーションの違い】

デジタイゼーション(Digitization)は「アナログ情報をデジタルに変換する」こと、デジタライゼーション(Digitalization)は「デジタル技術を使って業務プロセスを改善する」ことを指します。DXはその先にある「変革」を意味するため、この3段階を意識すると理解が深まります。

まとめ・試験ポイント

  • DX=デジタル技術でビジネスモデル・業務・組織文化を根本から変革すること
  • IT化(デジタイゼーション)=作業を紙・人手からデジタルツールに置き換えること
  • DXとIT化の最大の違い=「道具の変更」か「価値・やり方の変革」か
  • 行政DX=マイナポータル・オンライン申請など、行政サービスの変革
  • 経済産業省のDXレポート(2018年)が日本におけるDX推進の契機
  • 試験では「DXの説明として最も適切なもの」を選ぶ問題が頻出で、IT化との混同に注意

学習した内容を試験形式で確認しよう。ITパスポート入門試験100問に挑戦できます。

入門試験100問に挑戦する