分析の前提
ITパスポート試験は、ストラテジ系(問1〜35)・マネジメント系(問36〜55)・テクノロジ系(問56〜100)の3分野で構成されます。 各分野の問題数配分は3年間で変わっていませんが、出題されるトピックには明確な変化が見られます。
本記事では、問題文・選択肢・解説のキーワードをもとに各問を細分類し、トピックごとの出題数の増減を追跡しました。
注目すべき6つの変化
1. 「生成AI」が令和7年度で初登場(3問)
令和5〜6年度では出題ゼロだった「生成AI」が、令和7年度で一気に3問登場しました。 ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)の社会的普及が試験に反映された形です。
AI関連全体では毎年7〜11問出題されており、AIは引き続き最重要トピックの一つです。 今後は従来型AI(機械学習・ディープラーニング)に加え、生成AIの活用事例やリスクに関する出題が増える可能性があります。
2. IoTが急減(R5: 8問 → R7: 1問)
IoT関連のキーワードが登場する問題は、令和5年度の8問から令和7年度ではわずか1問に激減しました。 IoTの概念が社会に定着し「新しさ」が薄れたことで、出題の優先度が下がったと考えられます。 同様の傾向は過去にクラウドコンピューティングでも見られました。
3. マーケティング分野が3倍増(R5: 1問 → R7: 4問)
ストラテジ系のマーケティング関連が顕著に増加しています。 CRM・SFA・マーケティングオートメーションなど、ビジネス実務に直結する出題が強化されており、 ITパスポート試験が「IT知識+ビジネススキル」の両面を問う方向に進化していることがわかります。
4. セキュリティは毎年16〜20問で高止まり
テクノロジ系45問のうち、セキュリティ関連が約4割を占める状態が3年間続いています。 ただし出題の「中身」は変化しており、フィッシング(R5: 3問 → R7: 0問)が減り、 ランサムウェアや多要素認証など、より実践的なテーマへシフトしています。
5. アジャイル開発が定着(R5: 0問 → R6以降: 2〜3問)
令和5年度ではゼロだったアジャイル開発関連が、令和6年度から安定して出題されるようになりました。 DX推進に伴い、ウォーターフォール型だけでなくアジャイル型の開発手法への理解が求められています。
6. サービスマネジメントが微減、システム監査が微増
マネジメント系では、ITILベースのサービスマネジメントが減少傾向(R5: 4問 → R7: 3問)にある一方、 システム監査は微増(R5: 2問 → R7: 3問)しています。 ガバナンス・監査・内部統制への関心が高まっていることを反映しています。
トピック別出題数(詳細データ)
以下は、全300問をトピック別に集計した結果です。「変化」列はR7とR5の差分を示しています。
ストラテジ系(問1〜35)
| トピック | R5 | R6 | R7 | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| AI・データサイエンス | 7 | 5 | 4 | -3 |
| DX・新技術応用 | 1 | 5 | 3 | +2 |
| 経営戦略・分析手法 | 3 | 0 | 4 | +1 |
| マーケティング | 1 | 2 | 4 | +3 |
| 法務・コンプライアンス | 5 | 5 | 5 | ±0 |
| 会計・財務 | 4 | 5 | 4 | ±0 |
| 経営・ガバナンス | 0 | 3 | 2 | +2 |
| ビジネスモデル・用語 | 5 | 2 | 2 | -3 |
| 生産・在庫管理 | 3 | 1 | 1 | -2 |
| システム戦略・企画 | 3 | 3 | 3 | ±0 |
マネジメント系(問36〜55)
| トピック | R5 | R6 | R7 | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| プロジェクトマネジメント | 8 | 7 | 6 | -2 |
| 開発手法・プロセス | 5 | 2 | 3 | -2 |
| サービスマネジメント | 4 | 4 | 3 | -1 |
| システム監査 | 2 | 3 | 3 | +1 |
| AI・データサイエンス | 0 | 0 | 2 | +2 |
テクノロジ系(問56〜100)
| トピック | R5 | R6 | R7 | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| セキュリティ | 20 | 16 | 20 | ±0 |
| ネットワーク・通信 | 7 | 6 | 4 | -3 |
| データベース | 4 | 5 | 5 | +1 |
| ハードウェア・デバイス | 4 | 5 | 4 | ±0 |
| ソフトウェア・OS | 2 | 4 | 3 | +1 |
| プログラミング・アルゴリズム | 4 | 4 | 3 | -1 |
| 数理・統計 | 2 | 1 | 2 | ±0 |
| AI・データサイエンス | 2 | 1 | 3 | +1 |
注目キーワードの出現回数
問題文・選択肢・解説に登場する注目キーワードの出現回数を追跡しました。
| キーワード | R5 | R6 | R7 | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| 生成AI | 0 | 0 | 3 | +3 |
| AI(全体) | 11 | 7 | 9 | -2 |
| IoT | 8 | 3 | 1 | -7 |
| アジャイル | 0 | 3 | 2 | +2 |
| クラウド | 2 | 1 | 3 | +1 |
| ランサムウェア | 0 | 1 | 1 | +1 |
| フィッシング | 3 | 0 | 0 | -3 |
| 多要素認証 | 0 | 0 | 1 | +1 |
| バックアップ | 0 | 1 | 2 | +2 |
| RPA | 1 | 5 | 1 | ±0 |
受験対策へのポイント
- AI分野は最優先で対策を。従来型AI(機械学習・ディープラーニング)に加え、生成AIの仕組み・活用・リスクまで押さえましょう。
- セキュリティは量も質も重要。毎年最多出題の分野です。特にランサムウェア・多要素認証・ゼロトラストなど最新トレンドを重点的に。
- マーケティング・経営戦略の出題増に注意。ストラテジ系は暗記だけでなく、ビジネスの仕組みを理解する学習が効果的です。
- アジャイル開発の基本用語を押さえる。スクラム・スプリント・プロダクトバックログなどの用語は確実に。
- IoT・ブロックチェーンは深追いしすぎない。出題頻度が下がっている分野に時間をかけすぎないのも戦略です。
各分野の効率的な学習方法についてはITパスポート勉強法ガイドを、 シラバス改訂による出題範囲の変化はシラバス変更点まとめを参照してください。 また、年度ごとの合格率の推移は合格率の推移分析で確認できます。
※ 本記事の分析はIPAが公開している各年度の公開問題(各100問)に基づいています。 実際の試験では非公開の問題も出題されるため、公開問題の傾向が試験全体を完全に反映しているわけではありません。 トピック分類は問題文・選択肢・解説のキーワードに基づく独自分類であり、IPAの公式分類とは異なる場合があります。