今回の改訂はなぜ起きたのか
近年のAI・生成AIの急速な普及により、ビジネス現場では「データを扱うスキル」の体系的な評価が 強く求められるようになっています。しかし従来の試験体系では、この領域を正面から評価する区分が 存在しませんでした。また、DX推進を担う人材を国家資格として体系的に育成・評価する仕組みの 整備も課題とされていました。
構造的な問題としては、ITパスポート(レベル1)とレベル3以上の試験の間に、 スキル評価の空白地帯が生じていた点も挙げられます。ビジネス部門のDX担当者など、 エンジニアではないが一定のデータリテラシーが求められる層に適切な試験が 提供されていなかったのです。
今回の見直しは、単なるシラバス改訂ではありません。試験区分体系そのものを 再設計するという、情報処理技術者試験の歴史においても大きな節目となる改訂です。 シラバス改訂が「既存の枠組みの中で出題範囲を更新する」ものであるのに対し、 今回は「どのような試験区分を設けるか」という根本的な設計から見直しています。
新設される2つの試験
データマネジメント試験(仮称)
ITパスポートの次のステップとして、レベル2に位置づけられる新試験です。 ビジネス部門人材やDX担当者を主な対象とし、データを活用する業務に必要な 基礎的なデータマネジメントの知識・能力を評価します。
試験概要(案)
試験方式: CBT(随時受験可能な見込み)
出題数: 科目A 48問 + 科目B 12問
試験時間: 120分
開始時期: 2027年度夏〜秋(予定)
エンジニア向けの基本情報技術者試験とは対象者が明確に異なります。 「データを使う人」のための資格として、ITパスポートを取得したビジネスパーソンの ステップアップ先として位置づけられる見通しです。 詳細な試験範囲や対策については、データマネジメント試験の詳細解説記事で別途まとめています。
高度情報技術試験
応用情報技術者試験と高度試験群を再編・統合した上位資格として新設が見込まれています。 分野は大きく「マネジメント」「データ・AI」「システム」の3系統に整理される予定です。
現行の高度試験で採用されている記述式・論述式が廃止され、 全区分がCBT方式となる点が大きな変更点です。 これにより、論述がハードルとなって受験を敬遠していた層にとっても アクセスしやすい試験体系になると見られています。 開始時期は2027年度夏〜秋が予定されています。
PDF Ver.1.0(2026年3月公表)で明らかになった出題範囲の要点
IPAが2026年3月31日に公表した「出題範囲等の改定案 Ver.1.0」には、 高度情報技術試験の科目B(技能)出題範囲が領域ごとに示されています。 以下は各領域の主な範囲の概要です(2026年3月公表の改定案 Ver.1.0 に基づく。 シラバス詳細は2026年夏頃公表予定)。
- 高度情報技術マネジメント試験: デジタル戦略・ビジネス変革のマネジメント、サービスマネジメント(インシデント管理・SLA・継続的改善など)、 プロジェクトマネジメント(スコープ・リスク・資源管理など)、 組織のガバナンス・監査(内部統制・システム監査・AI利活用監査など)の4領域が中心です。 組織やビジネスにおけるデータ・デジタル技術の活用プロセスを マネジメントする専門的な知識・技能が問われます。
- 高度情報技術データ・AI試験: データマネジメント(データガバナンス・メタデータ管理・データ品質管理など)、 データ・AIの活用(統計学・機械学習・生成AI・RAG・AIエージェントなど)、 データエンジニアリング(データモデリング・データパイプライン設計・クラウド活用など)、 データ処理とアルゴリズム(SQLを含むCRUD操作・アルゴリズム・擬似言語プログラミング)の4領域が中心です。 組織のデータドリブンな活動を支える基盤を構築し、データを整備する専門的な知識・技能が問われます。
各領域の詳細な出題範囲については、デジタルスキル標準ver.2.0と高度情報技術試験の接続の記事もあわせてご参照ください。
試験区分体系の新旧対照
現行の試験区分体系と新体系の対応を整理しました。 区分の名称や枠組みは変わりますが、スキルの本質は引き継がれる形です。
| 旧体系 | 新体系(案) |
|---|---|
| ストラテジ系 | ビジネス系 |
| マネジメント系 | テクノロジ系(一部統合) |
| テクノロジ系 | テクノロジ系 |
| — | セキュリティ・倫理系(新設軸) |
セキュリティ・倫理系が独立した軸として新設される点は、 近年のサイバー攻撃の増加やAI倫理への社会的関心の高まりを反映しています。 試験区分体系の全体変更がシラバスにどう影響するかは、シラバス変更点まとめもあわせてご参照ください。
新体系で変わる試験
情報セキュリティマネジメント試験の動向
情報セキュリティマネジメント試験はIPA見直し案において「継続」と明記されており、新体系でも引き続き実施される予定です。 現行の試験制度は2026年度をもって終了しますが、これは個別試験の廃止ではなく 制度全体の移行であり、同試験は2027年度春頃から新体系のもとで実施される見込みです。
情報セキュリティマネジメント試験の受験を検討中の方へ
2026年度中は現行形式での実施が継続されます。 同試験は新体系でも継続されるため、ご自身のペースで準備を進めてください。
情報セキュリティマネジメント試験とITパスポートの違いや難易度比較については、情報セキュリティマネジメント模擬試験や情報セキュリティマネジメント試験とITパスポート試験の比較記事もご覧ください。
応用情報・高度試験の再編
IPAの見直し案では、応用情報技術者試験と高度試験群を「大括り化したうえで内容を再編する」 という方針が示されています。具体的には、これらを新設の高度情報技術試験の 3区分(マネジメント/データ・AI/システム)へ統合する方向です。 ネットワークスペシャリストやデータベーススペシャリストといった個別区分(現行の高度試験は8区分。 このほか情報処理安全確保支援士試験が別枠で見直しの対象となっています)が、 「独立した試験区分」としてそのまま存続することはない見込みですが、 各分野の知識・スキルは新試験に引き継がれるとされています。
一方で、各高度区分が新3区分のどこにどう対応するのか、既取得資格の有効性や 経過措置といった詳細は、この見直し案の段階では示されていません。 IPAはこれらの詳細を2026年度夏頃を目途に一通り公表する予定としています。 なお、案の冒頭では「現時点の検討状況であり、今後変更が生じる場合がある」ことも明記されています。
現時点で発表済みの方針と、未確定の情報を区別して整理すると、以下のとおりです。
- 方針として発表済み:応用情報・高度試験を高度情報技術試験(3区分)へ大括り化・再編、 記述式・論述式を廃止しCBT化、2027年度夏〜秋の開始予定
- 未確定(2026年度夏頃 公表予定):各高度区分と新3区分の具体的な対応関係、詳細な移行スケジュール、既取得資格の有効期間・経過措置
応用情報や高度試験を目指している方にとっては、2026年度中の受験も十分に選択肢となります。 現行合格資格の有効性については、IPAの公式発表を継続的に確認してください。
ITパスポートはどう変わるのか
ITパスポートは試験名称・レベルともに存続します。今回の改訂で廃止されることはありません。 主な変更は出題区分の名称変更で、現在の「ストラテジ系」が「ビジネス系」に変わるなど、 体系名の整合が図られます。
受験対策の観点では、現在のシラバス6.5に対応した内容で準備して合格を目指すことが 最も現実的です。新体系への移行後も、ITパスポートの合格資格は有効です。 学習方法についてはITパスポート勉強法ガイド、 合格率の推移については合格率の推移データもご参照ください。
改訂スケジュールのタイムライン
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年3月31日 | IPAが試験区分体系などの見直し(案)を公表 |
| 2026年度 | 現行試験(情報セキュリティマネジメント試験・FE・AP・高度等)が継続実施 |
| 2026年夏頃 | シラバス・サンプル問題の公表(予定) |
| 2026年10月16日 | 経済産業省が省令案を公表し意見募集を開始(〜11月14日。新試験の正式名称は「高度情報技術試験」と明記。施行予定日は2027年4月1日) |
| 2027年度夏〜秋 | データマネジメント試験・高度情報技術試験 開始(予定) |
2026年夏頃に公表される予定のシラバス・サンプル問題が、 具体的な試験範囲を把握するうえで重要な情報源となります。 PassDojoでも公表次第、内容を解説記事として発信する予定です。
受験者が今すべきこと
- 2026年度中に現行試験の合格を目指す。情報セキュリティマネジメント試験や応用情報・高度試験の受験を予定している方は、現行形式が継続される 2026年度内に受験・合格を目指すことを優先的に検討してください。 移行後の扱いが確定する前に合格しておくことが、最もリスクの少ない選択です。
- ITパスポートは慌てず、着実に準備して受験する。ITパスポートは存続する試験です。 現在のシラバス6.5に対応した教材で準備を進めれば、 改訂後も有効な資格として活用できます。PassDojoのITパスポート模擬試験で実力を試してみましょう。
- データマネジメント試験の詳細発表を継続ウォッチする。2026年夏頃に公表されるシラバス・サンプル問題が、 対策の方向性を決める重要な情報となります。 詳細はデータマネジメント試験の詳細解説もご確認ください。
- 職種・目的に合わせた受験区分を再検討する。今回の改訂は、受験区分の選び方を再考する良い機会です。 「エンジニアとしてのスキルアップ」「ビジネス部門でのデータ活用」 「セキュリティ専門性の証明」など、目的に応じた最適な区分を選びましょう。
- IPAの公式情報を一次情報として確認する。本記事で紹介した情報は「案」の段階のものを含みます。 試験の詳細は変更される可能性があるため、 IPA公式サイト(https://www.ipa.go.jp/)での確認を習慣にしてください。
2026年4月16日発表——デジタルスキル標準ver.2.0との連動
試験区分体系の見直し(2026年3月31日公表)から約2週間後の2026年4月16日、 IPAは「デジタルスキル標準ver.2.0」を公表しました。これは単なる偶然ではなく、 試験制度の再設計と人材育成基準の更新が一体的に進められていることを示しています。 新しい試験体系が「どのような人材を育てるか」という設計思想は、 デジタルスキル標準という上位の枚組みと整合する形で決められているのです。
デジタルスキル標準ver.2.0の主な変更点と、高度情報技術試験との対応関係は次のとおりです。
- データマネジメント類型の新設(データスチュワード/データエンジニア/データアーキテクト) → 高度情報技術データ・AI試験のデータエンジニアリング・データマネジメント領域に対応
- AI実装・運用スキルおよびAIガバナンススキルの追加→ 高度情報技術データ・AI試験のデータ・AI活用領域(生成AI・RAG・AI倫理)に対応
- ビジネスアーキテクト類型の再定義(ビジネスアーキテクト/ビジネスアナリスト/プロダクトマネージャー) → 高度情報技術マネジメント試験のビジネス変革・デジタル戦略マネジメント領域に対応
デジタルスキル標準ver.2.0の全体像についてはデジタルスキル標準ver.2.0の詳細解説を、 試験との接続についてはデジタルスキル標準ver.2.0と高度情報技術試験の接続をあわせてご参照ください。
2026年7〜9月発表——各試験のシラバス案が続々公表
試験区分体系の見直し(2026年3月)、デジタルスキル標準ver.2.0(2026年4月)に続き、 2026年7〜9月には各新試験の出題範囲を具体化する「シラバス案」が相次いで公表されました。
- 2026年7月31日:当時の仮称(現在の高度情報技術マネジメント試験・高度情報技術システム試験の旧称)である 「プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(仮称)」および「プロフェッショナルデジタルスキル (システム)試験(仮称)」のシラバス案がVer.0.2に更新されました (【目標とする知識(専門知識)】=科目A-2の出題範囲の細目を追加)。
- 2026年8月31日:ITパスポート試験、データマネジメント試験(仮称)、情報処理安全確保支援士試験の シラバス案Ver.0.1が新たに公表されました。
- 2026年9月30日:情報セキュリティマネジメント試験・基本情報技術者試験の各シラバス案Ver.0.1と、 IPAの資料名「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)及び情報処理安全確保支援士試験 科目A-1(共通知識)」のシラバス案Ver.0.1が公表されました。
いずれも現時点では「案」の段階であり、今後の見直しを経て正式版が確定する見込みです。 ITパスポート試験のシラバス案の詳細は新シラバス案Ver.0.1の解説記事で、データマネジメント試験(仮称)のシラバス案の詳細はデータマネジメント試験(仮称)シラバス案の解説記事でそれぞれ詳しく解説しています。
2026年10月16日公表——省令案で正式名称が「高度情報技術試験」に
シラバス案に続いて、新試験の名称に動きがありました。2026年10月16日、経済産業省が「情報処理の促進に関する法律施行規則」を改正する省令案を意見公募にかけ、 IPAがこれまで仮称で呼んできた新試験の正式名称が「高度情報技術試験」として明記されたのです。 区分は「高度情報技術マネジメント試験」「高度情報技術データ・AI試験」「高度情報技術システム試験」の3つで、 旧称のプロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)と同じ並びです。 いずれも案の段階で、公布前のため変更される可能性があります。
意見募集の期間は2026年10月16日から11月14日までです。省令案の施行予定日は2027年(令和9年)4月1日(様式の一部のみ同年3月8日)で、 最初の試験日を示すものではありません。IPA公式サイトは2026年10月20日時点で新名称を掲載しておらず、仮称の表記のままです。
科目免除の見直しも盛り込まれています。高度情報技術試験の合格者が合格の公示から2年以内に高度情報技術試験を受ける場合は、共通的知識の科目が免除される形です。 現行の応用情報技術者試験・高度試験の合格者についても、経過措置(附則第二条)により2029年6月30日までは同様の免除を受けられる見込みです。 また、中小企業診断士の第一次試験「経営情報システム」の免除対象は、改正後は高度情報技術マネジメント試験と高度情報技術システム試験に限られ、 高度情報技術データ・AI試験は含まれません。
なお「高度試験」は現行のITストラテジスト試験など8区分の総称、「高度情報技術試験」は新しい3区分の総称で、別のものです。 条文の引用や免除の対象者の一覧、IPA資料との関係は、高度情報技術試験(旧プロフェッショナルデジタルスキル試験)の省令案を読み解く記事で整理しています。
まとめ
- 新設:データマネジメント試験(レベル2・ビジネス部門向け)と 高度情報技術試験(応用・高度試験を再編・CBT化)が 2027年度夏〜秋に開始予定
- 再編・移行:情報セキュリティマネジメント試験は新体系でも継続。応用情報・高度試験は高度情報技術試験に統合へ
- 継続:ITパスポートは名称・レベルとも存続。現在の資格も引き続き有効
- デジタルスキル標準との連動:2026年4月16日公表のver.2.0により、新試験体系が育てる人材像がより明確化
- シラバス案の公表:2026年7月31日に高度情報技術試験(旧称:プロフェッショナルデジタルスキル試験)のマネジメント・システム2区分のシラバス案(当時は仮称)がVer.0.2に更新、 8月31日にITパスポート・データマネジメント(仮称)・情報処理安全確保支援士のシラバス案Ver.0.1、9月30日に科目A-1(共通知識)などのシラバス案Ver.0.1を公表
PassDojoでは、現行の情報処理技術者試験に対応した模擬試験を引き続き提供しています。 改訂の詳細が確定次第、新試験の対策コンテンツも順次追加していく予定です。 新情報が公表された際には本記事も更新します。
新試験の準備を始める
データマネジメントの基礎知識を今から学んでおきましょう。 現行試験の模擬試験も引き続きご利用いただけます。
よくある質問
情報処理技術者試験の2027年改訂で廃止される試験はありますか?
情報セキュリティマネジメント試験とITパスポートは新体系でも継続されます。応用情報・高度試験は 高度情報技術試験に再編される方向です。 いずれも「案」の段階であり、IPAの公式発表を継続的に確認されることをお勧めします。
データマネジメント試験(仮称)はいつから受験できますか?
2027年度夏〜秋の開始が見込まれています。詳細なスケジュールはIPAの公式発表を待ってください。
データマネジメント試験はITパスポートと基本情報のどちらに近いですか?
ITパスポートの次のステップ(レベル2)に位置づけられる予定です。 対象はビジネス部門のDX担当者など「データを使う人」であり、 エンジニアを対象とする基本情報技術者試験とは対象者の属性が明確に異なります。
情報セキュリティマネジメント試験を目指している場合はどうすればよいですか?
情報セキュリティマネジメント試験は新体系でも継続される予定です。2026年度中は現行制度で実施され、 2027年度春頃から新体系に移行します。 焦らずご自身のペースで準備を進めてください。
※ 本記事の情報は、IPAが2026年3月31日に公表した「試験区分体系などの見直し(案)」および2026年4月16日に公表した「デジタルスキル標準ver.2.0」に基づいています。 試験の名称は、2026年10月16日に経済産業省が公表した省令案(公布前・意見募集は2026年11月14日まで)に基づくもので、IPA公式サイトは2026年10月20日時点で旧称「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」の表記です(確認日: 2026-10-20)。IPAの2026年3月以降の資料中の呼称は旧称ですが、本記事では新名称で記載しています。 記載内容は「案」の段階であり、今後の正式発表により変更される可能性があります。 試験の最新情報は必ずIPA公式サイト(https://www.ipa.go.jp/)でご確認ください。 本記事は随時更新予定です。