2027年新制度での扱い(注意)
情報セキュリティマネジメント試験は、2027年度春頃から新試験制度に移行する予定ですが、試験区分としては「継続」と、IPAが2026年3月31日に公表した検討状況で明記されています(2026年4月28日更新。内容は今後変更される可能性があります)。制度移行の詳しい経緯は情報セキュリティマネジメント試験はなくなる?新制度での位置づけと次のステップをご覧ください。※本記事の制度情報は確認日: 2026年10月4日時点のものです。
負荷分散(ロードバランシング)とは?結論から仕組みを確認
結論から言うと、負荷分散(ロードバランシング)とは、1台のサーバーに集中しがちなアクセスやデータ処理の負荷を、複数のサーバーに振り分けて分散させる仕組みです。この振り分けを行う装置やソフトウェアのことを「ロードバランサー(負荷分散装置)」と呼びます。総務省の資料でも、ロードバランサーは「ウェブシステムの負荷分散を行うための負荷分散装置」と説明されており(出典: 総務省 公開資料)、クライアント(利用者の端末)からのアクセス要求を受け付け、同じ機能を持つ複数のサーバーに振り分けて転送する役割を担います。
イメージとしては、スーパーのレジに長い行列ができたときに、店員が「空いているレジへどうぞ」と案内する様子に近い仕組みです。利用者から見ると1つの窓口にアクセスしているように見えますが、その裏側では複数のサーバーが並行して処理を行っており、特定のサーバーに負荷が集中しないよう調整されています。
負荷分散が必要になる理由(可用性・パフォーマンスの観点)
負荷分散が必要とされる理由は、大きく「パフォーマンス(性能)」と「可用性(止まらないこと)」という2つの観点から説明できます。
パフォーマンスの観点では、アクセスが集中する時間帯でも複数のサーバーで処理を分担することで、応答速度の低下やタイムアウトを防ぐことができます。1台のサーバーの処理能力には限界があるため、サーバーの台数を増やして全体の処理能力を高める「スケールアウト」という考え方と、負荷分散は密接に関係しています。
可用性の観点では、複数のサーバーのうち1台が故障したり保守作業で停止したりしても、残りのサーバーで処理を引き続き行えるため、サービス全体が停止するリスクを減らせます。この「一部が止まっても全体は動き続ける」という考え方を冗長化と呼び、負荷分散は冗長化を実現するための代表的な手段の一つです。負荷分散装置自体が単一障害点(1台が止まるとシステム全体が止まってしまう箇所)にならないよう、ロードバランサーを複数台で冗長構成にすることも実務では重要になります。
| 観点 | 負荷分散で得られる効果 |
|---|---|
| パフォーマンス | アクセスの集中を複数サーバーで分担し、応答速度の低下を防ぐ |
| 可用性(冗長化) | 一部のサーバーが停止しても、残りのサーバーで処理を継続できる |
| スケーラビリティ | サーバー台数を増やすことで、全体の処理能力を拡張しやすくなる(スケールアウト) |
負荷分散の代表的な方式
負荷分散には、どのサーバーにアクセスを振り分けるかを決める「分散方式」がいくつかあります。代表的な方式を整理します。
- ラウンドロビン方式:複数のサーバーに対して、順番に均等にアクセスを振り分ける方式です。各サーバーへの割り振りが単純で、設定・運用がしやすい一方、サーバーごとの処理能力の差や、処理中の負荷の違いを考慮しない点が弱みです。
- 最小接続方式:その時点で処理中の接続数が最も少ないサーバーへ優先的に振り分ける方式です。サーバーごとの処理状況に応じて動的に振り分け先を調整できるため、処理時間にばらつきがある場合でも負荷を均等に近づけやすくなります。
- 重み付け方式:サーバーごとの処理能力に応じて「重み」を設定し、処理能力の高いサーバーにはより多くのアクセスを、処理能力の低いサーバーには少ないアクセスを振り分ける方式です。性能の異なるサーバーが混在する環境で有効です。
振り分け先を決めるだけでなく、負荷分散を安全に機能させるためには「ヘルスチェック」という仕組みも欠かせません。ヘルスチェックとは、ロードバランサーが各サーバーに対して定期的に正常性を確認する処理のことで、応答がない、あるいは異常な応答を返すサーバーを振り分け先から自動的に除外します。これにより、故障したサーバーにアクセスが振り分けられ続けるという事態を防げます。
また、同じ利用者からの複数のリクエストを、常に同じサーバーへ振り分け続ける制御を「セッション維持(パーシステンス)」と呼びます。ショッピングカートの内容やログイン状態など、特定のサーバー上に保持されている情報を参照する必要がある処理では、セッション維持が適切に行われないと、利用者が意図しない形でカートの内容が消えてしまうといった不具合が起こり得ます。
広域負荷分散(GSLB)とは?拠点間での負荷分散の仕組み
ここまで説明した負荷分散は、同じデータセンターやネットワーク内にある複数のサーバー間でアクセスを振り分ける仕組みでした。これに対して、地理的に離れた複数の拠点(データセンター)間でアクセスを振り分ける仕組みを「広域負荷分散」と呼びます。英語では Global Server Load Balancing の略称でGSLBと呼ばれることもあります。
広域負荷分散は、1台のロードバランサーだけでは実現できません。総務省が公表している研究開発事業の報告では、従来のロードバランサー単体による負荷分散には拡張性(スケーラビリティ)の限界があり、サーバー台数が増えるにつれて多数のサーバーの負荷情報を集めること自体がボトルネックになるという課題が指摘されています(出典: 総務省 研究開発事業一覧)。この課題に対応するため、ネットワーク的に近い場所にあるサーバー同士が自律的に負荷情報を交換し、全体として負荷を均一化する技術が研究開発された経緯があります。
広域負荷分散の典型的な仕組みは、利用者がアクセスしようとするドメイン名に対して、名前解決(DNS)の段階で、利用者の位置や各拠点の負荷状況に応じて異なるIPアドレスを返すという方法です。これにより、利用者を地理的に近い拠点や、負荷が低い拠点へ自動的に振り分けることができます。災害などで1つの拠点が利用できなくなった場合に、別の拠点へ自動的に切り替える、事業継続(BCP:Business Continuity Planning)・災害対策(DR:Disaster Recovery)の観点でも活用される仕組みです。
一般的な負荷分散(同一拠点内でのロードバランシング)と広域負荷分散の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 負荷分散(ロードバランシング) | 広域負荷分散(GSLB) |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 同一拠点・同一ネットワーク内の複数サーバー | 地理的に離れた複数拠点(データセンター) |
| 主な実現方法 | ロードバランサー(負荷分散装置)による振り分け | DNSによる名前解決の結果を拠点ごとに変える方法が代表的 |
| 主な目的 | 単一拠点内でのパフォーマンス向上・冗長化 | 拠点単位の可用性確保、利用者に近い拠点への振り分け、BCP・DR対策 |
負荷分散装置(ロードバランサ)の設置場所
負荷分散装置は、一般的にインターネットと社内のWebシステムの間、つまりDMZ(インターネットと内部ネットワークの中間に設けられる区域)に設置されます。総務省の資料でも「ロードバランサーはDMZ内に設置し、インターネットからウェブシステムに対するアクセスを受け付け、適切なウェブシステムに振り分ける」という位置づけが示されています(出典: 前掲の 総務省 公開資料)。
また、近年ではロードバランサーが、Webシステムやデータベースをインターネットから直接見えないように隠す「リバースプロキシ」としての機能を兼ねて導入されることもあります。リバースプロキシを介する場合には、Webシステム自体をDMZ上ではなく、より内側のLAN上に配置するという構成も可能になるとされています。ロードバランサーがどこに設置されるかによって、ネットワーク全体の構成や、外部から見える経路が変わってくる点は、システム構成を理解するうえで押さえておきたいポイントです。
試験での出題のされ方(ITパスポート試験・情報セキュリティマネジメント試験との関連)
自社で収録しているITパスポート試験(令和5年度)の公開問題データには、負荷分散に関連する出題が実際に含まれています。具体的には、「Webサービスなどにおいて、信頼性を高め、かつ、利用者からの多量のアクセスを処理するために、複数のコンピュータを連携させて全体として一つのコンピュータであるかのように動作させる技法」を問う設問があり、正解は「クラスタリング」という技法でした。この設問は負荷分散という用語そのものを直接問うものではありませんが、複数のコンピュータを連携させて負荷を分散し、信頼性と処理能力を高めるという考え方が、ITパスポート試験で実際に出題されていることがわかります。
情報セキュリティマネジメント試験については、自社で収録している令和7年度公開問題データの中には、負荷分散を直接問う設問は見当たりませんでした(2026年10月4日時点の確認)。ただし、情報セキュリティマネジメント試験の出題内容(IPA公式「情報セキュリティマネジメント試験 出題内容」ページ)では、科目Aの関連分野として「テクノロジ:ネットワーク、データベース、システム構成要素」が挙げられており、負荷分散やロードバランサーはこの関連分野に含まれ得るテーマです。そのため本記事では、「情報セキュリティマネジメント試験で頻出のテーマ」と断定せず、「関連分野として出題され得るテーマ」という位置づけで扱っています。
ネットワークセキュリティの観点では、負荷分散装置(ロードバランサー)そのものが単一障害点にならないよう冗長化すること、DDoS攻撃(大量のアクセスでサービスを妨害する攻撃)への耐性を高める手段として負荷分散やCDN(Content Delivery Network)が活用されることも、情報セキュリティマネジメント試験・ITパスポート試験の双方で問われやすい関連テーマです。セキュリティ機器のIDS・IPS・WAFの違いについては、姉妹記事のIDS・IPS・WAFの違いとは?設置場所と役割をわかりやすく解説で解説していますので、あわせてご確認ください。ITパスポート試験の出題形式に近い問題で理解度を確認したい場合は、ITパスポート試験 令和7年度公開問題も活用してください。
よくある質問
負荷分散と冗長化の違いは何ですか?
負荷分散は「複数のサーバーに処理を振り分けること」を指し、冗長化は「一部の機器が故障してもシステム全体が止まらないようにすること」を指します。両者は重なる部分が多く、負荷分散を導入することで結果的に冗長化(1台が止まっても他のサーバーで処理を継続できる状態)も実現できますが、冗長化には負荷分散以外の方法(バックアップ機器への切り替えなど)も含まれるため、完全に同じ概念ではありません。
広域負荷分散はどんな場面で使われますか?
広域負荷分散(GSLB)は、地理的に離れた複数のデータセンターを運用しているサービスで、利用者を地理的に近い拠点へ振り分けてアクセス速度を改善したい場合や、災害などで1つの拠点が利用できなくなった際に別の拠点へ自動的に切り替えて事業を継続したい場合(BCP・DR対策)に使われます。DNSによる名前解決の結果を、拠点ごとの状況に応じて変える方法が代表的な実現方法です。
負荷分散は試験でどんな形で問われますか?
ITパスポート試験では、複数のコンピュータを連携させて信頼性と処理能力を高める技法(クラスタリングなど)を問う設問として、負荷分散に関連する考え方が実際に出題されています。情報セキュリティマネジメント試験では、テクノロジ分野の「ネットワーク、データベース、システム構成要素」という関連分野に含まれ得るテーマとして扱われます。負荷分散の目的(パフォーマンス向上・可用性確保)と、代表的な方式(ラウンドロビン・最小接続・重み付け)、ヘルスチェックの役割を整理しておくと、どちらの試験でも対応しやすくなります。
まとめ
負荷分散(ロードバランシング)は、1台のサーバーに集中しがちな処理を複数のサーバーに振り分け、パフォーマンスの向上と可用性の確保(冗長化)を実現する仕組みです。代表的な方式には、均等に振り分けるラウンドロビン方式、処理状況に応じて振り分けるが最小接続方式、サーバーごとの性能差を考慮する重み付け方式があり、ヘルスチェックによる正常性確認やセッション維持(パーシステンス)と組み合わせて運用されます。地理的に離れた複数拠点間での負荷分散は「広域負荷分散(GSLB)」と呼ばれ、DNSによる名前解決を活用して利用者を適切な拠点へ振り分ける仕組みが代表的です。負荷分散装置(ロードバランサー)は、一般的にDMZ内に設置され、インターネットからのアクセスを受け付けて適切なサーバーへ転送する役割を担います。ITパスポート試験では複数コンピュータの連携による信頼性・処理能力向上という考え方が実際に出題されており、情報セキュリティマネジメント試験でもネットワーク分野の関連テーマとして出題され得ます。ネットワークセキュリティ機器であるIDS・IPS・WAFの違いについては、姉妹記事のIDS・IPS・WAFの違いとは?設置場所と役割をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
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