【注意】省令案に基づく記事です。
本記事の試験名称は、2026年10月16日に経済産業省が公表した省令案(意見募集は2026年11月14日まで)に基づきます。公布前のため変更される可能性があります。IPA公式サイトは2026年10月31日時点で旧称「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」の表記です。シラバス案・サンプル問題はいずれも「案」であり、正式シラバスの公表までに内容が変更される可能性があります。
科目Bサンプル問題の概要
出典:プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)科目B サンプル問題(IPA、2026年10月30日公表。旧称表記はIPA公表物の名称)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 問題数 | 6問(全18ページのPDF。解答例と出題趣旨つき) |
| 形式 | 長文の事例+空欄a〜d等に入る字句の組合せを解答群から選ぶ多肢選択 |
| 記述・論述 | なし |
| 正解(解答例) | 問1 イ/問2 キ/問3 エ/問4 ウ/問5 オ/問6 オ |
各問の解説は選択肢の番号で説明します。IPAのサンプル問題のページのPDFを開きながら読むと、根拠をたどりやすくなります。
読む前に、二つの点に注意してください。一つ目は、IPAがこのサンプル問題を、新たな出題分野と出題形式のイメージを共有するための資料と位置づけていることです。実際の試験と同様の問題作成やチェックのプロセスを経たものではない、と明記されています。二つ目は、サンプルの6問が本試験1回分ではないことです。IPAが2026年3月31日に公表した見直しの検討状況では、科目Bは12問の予定とされています。試験時間は科目A-1が90分(60問)、科目A-2(23問)と科目Bを合わせて120分の予定です。これは2026年3月公表の検討状況に基づく予定値で、変更の可能性があります。配点・合格基準・受験料はIPAから公表されておらず、今回のシラバス案やサンプル問題にも試験時間・出題数の記載はありません。
マネジメント区分とシステム区分のサンプルは2026年8月31日に公表済みで、3区分のサンプルが出そろいました。そちらはマネジメント・システム区分のサンプル問題解説に委ねます。
問1 データコントラクトと破壊的変更——正解イ
題材:分散型のデータマネジメントを採るA社で、営業部門が公開するデータプロダクトの「月間売上金額(千円単位)」の列が、別部門の要望で円単位に書き換えられます。変更は要望元の経営企画部門にしか伝わらず、利用中のマーケティング部門の解約予測AIは売上を1000倍と誤認してしまいます。
問われていること:空欄aはこの事象の原因、空欄bは再発防止のために利用者向けに設ける「新規契約時」の条文です。
正解と考え方:正解はイ(a=一、b=五)です。原因は二点あります。列の意味が変わったのに説明文の単位が古いまま残ったことと、互換性のない変更を実際の利用者に知らせて合意し直さなかったことです。補助ツールの設計や要望元に責任を求める見方は、本文の事実と合いません。条文のほうは、契約時に定義の食い違いを見つけたら、黙って受け入れず提供者に直させてから合意する、という内容が適切です。本文では経営企画部門が単位の食い違いに気づきながら合意しており、これを防ぐルールです。自前の検査や損失報告に寄った条文案は、定義そのものを正す流れになりません。
対策ポイント:列の意味や単位を変える変更は、型が同じでも破壊的変更です。シラバス案Ver.0.1の小項目1-4にも、提供者と利用者の取り決めをデータ契約として定め、変更管理を設計する技能が例示されています。
問2 散布図行列と重回帰分析の解釈——正解キ
題材:ECサイトの月次利益を最大化するため、24か月分のデータを散布図行列で可視化し、SNS広告費のみ、メール配信数のみ、両方を使う3つの回帰モデルを比較します。
問われていること:空欄aは散布図行列から読み取れること、空欄bは決定係数が最大のモデル3から言えることです。
正解と考え方:正解はキ(a=三、b=四)です。aは、2つの説明変数に弱い正の相関があり、共線性が示唆されるという読み取りです。表の数値も裏づけになります。メール配信数の係数は、単独のモデル2では0.220と正ですが、SNS広告費と組み合わせたモデル3では−0.586と符号が逆転しており、説明変数同士が絡み合う典型的な現象です。メール配信数が利益を左右するという読みは、モデル2の決定係数が0.064と低いことと合いません。広告費と売上に強い負の関係を見る読みも、広告で売上が伸びる構造から不自然です。bは、メール配信数を固定したとき、SNS広告費1万円あたり利益が約3.6万円増えると予測できる、という読みで、モデル3の係数3.637の素直な解釈です。典型的な誤読は二つあります。切片の符号から「利益が出ない」と決めつけること(切片は説明変数がすべて0のときの値にすぎません)、決定係数0.949をそのまま精度94.9%とみなすこと(決定係数はばらつきの説明割合で、的中率ではありません)です。
対策ポイント:回帰係数は「他の変数を固定したときの効果」と言い換えましょう。
問3 LLMを使った支援システムとRAG・文脈内学習——正解エ
題材:精密機器メーカーA社が、頻繁に改訂される製品仕様書をもとに、保守エンジニア向けの対話型トラブルシューティング支援システムを作ります。要件は、改訂を速やかに反映できることと、回答の根拠の仕様書を確認できることです。追加学習したLLMと、追加学習せず関連情報を検索してプロンプトに付加する方式を比べ、後者を採用します。
問われていること:プロンプトに付加するもの(a)、この方式が活用するLLMの能力(b)、回答出力時に行うこと(c)です。
正解と考え方:正解はエ(a=一、b=五、c=六)です。問題文に「RAG」の語はありませんが、この方式は一般にRAG(検索拡張生成)と呼ばれる方式で、シラバス案Ver.0.1の小項目2-4にもRAGの記載があります。aは、質問に応じて検索で取り出した関連文書です。bは、モデルのパラメータを更新せず、提示された情報から回答を導く能力で、文脈内学習(In-Context Learning)と呼ばれます。モデル内部の知識に頼る方向や、モデルを更新し続ける方向は、「更新せず外部情報で答える」という方式の説明になりません。cは、回答の根拠となった文書名を示すことです。信頼度の数値を出すだけでは、どの仕様書に基づくかを直接確認する要件を満たせません。
対策ポイント:追加学習と検索付加の方式を、鮮度・コスト・根拠提示の観点で比較できるようにしておきましょう。
問4 データレイク・DWH・データマートへのデータ配置——正解ウ
題材:住宅設備メーカーA社のデータ分析基盤では、データがデータレイク、DWH(データウェアハウス)、データマートの順にETL(抽出・変換・格納)で流れます。ここへコールセンターの問合せ記録(日別のJSON)を加えます。要件は、全社で全期間を汎用的に分析する、設備保守部門が一定期間の点検修理要の問合せを切り出して分析する、機械学習で活用する、の三つです。
問われていること:要件1と要件2について、データをどこに配置し、どこのデータをETLで加工して格納するかです。
正解と考え方:正解はウ(a=DWH、b=データレイク、c=データマート、d=DWH)です。要件1は全社・全期間・汎用的な用途なので、軸となるユーザーと設備のデータをDWHに置き、元の問合せ記録があるデータレイクのデータをETLで加工して格納します。要件2は特定部門が期間を絞って使う用途なのでデータマートに置き、加工の元は設備情報などのマスターデータを持つDWHです。データレイクは生データ、DWHは全社共通の整理済みデータ、データマートは用途別の切り出し、という役割で整理できます。
対策ポイント:データがどこから来て、どこで加工され、誰が使うかを図で追う習慣をつけましょう。シラバス案Ver.0.1の小項目3-4が関連します。データパイプライン設計ガイドとNoSQLとRDBの違いも参考になります。
問5 SQLと統計情報による結果行数の見積り——正解オ
題材:不動産賃貸仲介のA社が、RDBMS上の「物件」テーブル(160万行)で検索システムを運用しています。沿線の列値個数は400、エアコンとオートロックはそれぞれ2です。各列は互いに独立で一様分布と仮定し、SQL文ごとの結果行数を見積もります。
問われていること:空欄aは「指定沿線で、エアコンまたはオートロックのいずれかがある」SQL2の見積り行数、空欄bは「両設備がある物件の沿線別件数が全体に占める割合を百分率で求める」SQL3の式です。
正解と考え方:正解はオ(a=3,000、b=COUNT(*) * 100 / TOTAL)です。計算過程は次のとおりです。
- 沿線を1本に絞ると、160万行÷400=4,000行です。
- エアコンありは1/2、オートロックありも1/2なので、両方ありは1/4で、4,000×1/4=1,000行です。表のSQL1の見積りと一致します。
- どちらか一方でもありは、1/2+1/2−1/4=3/4で、4,000×3/4=3,000行がSQL2の見積りです。
4,000は沿線だけ、1,000は両方ありの件数で、条件を取り違えた値です。bは、割合を百分率にするには100倍が必要なのでCOUNT(*) * 100 / TOTALが適切です。100倍のない式では百分率になりません。SUM(*)は構文として成立しません。
対策ポイント:ORの確率(A+B−A×B)と、GROUP BYで結果行数がどう決まるかを押さえましょう。シラバス案Ver.0.1の小項目4-1が対応します。
問6 擬似言語で書かれた得点補正アルゴリズム——正解オ
題材:100点満点の得点を昇順に格納した配列を受け取り、中央値を基準に補正して返す関数correctionが、擬似言語で示されます。中央値以下は「50÷中央値×得点」、超える得点は「50÷(100−中央値)×(得点−中央値)+50」で計算し、小数第1位で四捨五入します。
問われていること:correction({20, 30, 30, 30, 60, 80})の戻り値に、50以上の要素が何個含まれるかです。
正解と考え方:正解はオ(5個)です。計算過程は次のとおりです。
- 要素数6は偶数なので、中央値は3番目と4番目の平均で、(30+30)÷2=30です。
- 中央値以下の20、30、30、30には50÷30を掛けます。20は33.3…で33、30は3つとも50です。
- 60は50÷70×30+50=71.4…で71です。
- 80は50÷70×50+50=85.7…で86です。
- 補正後は
{33, 50, 50, 50, 71, 86}で、50以上は5個です。
対策ポイント:出題趣旨は、データ前処理ツールをAIも駆使して作る場面を想定しています。トレースは変数の値を一行ずつ書き出すと確実です。シラバス案Ver.0.1の小項目4-2・4-3が対応します。
ここまでに出たデータレイク・DWH・回帰分析などの用語は、想定問題集で確認できます。
サンプル問題6問から読み取れる方向性と対策——シラバス案Ver.0.1の科目B大項目との対応
6問を、シラバス案Ver.0.1の科目B 大項目に当てはめてみましょう(対応はPassDojo編集部の見立てです)。
| 問 | 題材 | 対応する大項目・小項目(編集部の見立て) |
|---|---|---|
| 問1 | データコントラクト、メタデータ変更管理 | 1 データマネジメントに関すること(1-4) |
| 問2・問3 | 回帰分析、LLM・検索付加 | 2 データ・AIの活用に関すること(2-3、2-4) |
| 問4 | データレイク・DWH・データマート | 3 データ基盤の構築に関すること(3-4) |
| 問5・問6 | SQL、擬似言語 | 4 データ処理とアルゴリズムに関すること(4-1〜4-3) |
シラバス案には、科目Bの各項目の出題割合は基本的に大項目の構成に基づく、という記述があります。ただし、サンプルは前述のとおりイメージ共有のための資料で、6問は本試験1回分でもありません。この表から本試験の出題比率や難易度を読み取ることはできず、あくまで「どんな題材と形式が想定されているか」の方向性を知る手がかりです。各大項目の内容はシラバス案Ver.0.1の解説記事をご覧ください。
対策は三つです。長い事例文から誰が何を変えて何が起きたかを整理する読解力、問5や問6のように手を動かせば解ける問題を落とさない計算力、データレイクとDWHなどの用語を役割ごとに使い分ける力です。
まず出題範囲の解説記事で全体像を確認し、データマネジメント分野はデータマネジメント試験の科目B対策、データマネジメント試験のサンプル問題解説、メタデータとデータカタログの記事が役立ちます。想定問題集で問われ方に慣れ、入門学習で基礎用語を固めましょう。
よくある質問
高度情報技術データ・AI試験の科目Bサンプル問題は何問ありますか?
2026年10月30日にIPAが公表した科目Bのサンプル問題は6問です。全18ページのPDFで、問題、解答例、出題趣旨で構成されています。この問題数は本試験の出題数を示すものではありません。IPAの2026年3月公表の検討状況では科目Bは12問の予定で、変更の可能性があります。配点・合格基準・受験料はIPAから公表されていません。
科目Bサンプル問題にSQLやプログラミングは出ますか?
はい、サンプル問題には両方が含まれています。問5はRDBMSの統計情報をもとにSQL文の結果行数を見積もる問題、問6は擬似言語で書かれた得点補正の関数を読み解き、戻り値を求める問題です。いずれも解答群から選ぶ多肢選択で、実際にコードを書く形式ではありません。ただしサンプルは出題形式のイメージ共有用で、本試験の出題内容を保証するものではありません。
科目Bサンプル問題はどこで入手できますか?
IPAの「新試験制度のサンプル問題について」のページに、データ・AI区分の科目BのPDFが掲載されています。公表されているのはPDFのみで、電子データの提供はありません。IPAは著作権を放棄していませんが、教育目的など試験制度の意義に反しない範囲で問題集やテキストに使う場合は、法令に特別の定めがある場合を除き使用許諾や使用料は不要で、出典の明記が必要です。
まとめ
- 科目Bサンプル問題は2026年10月30日に公表された6問で、すべて字句の組合せを選ぶ多肢選択形式(記述・論述なし)
- 正解は問1イ、問2キ、問3エ、問4ウ、問5オ、問6オ。題材はデータコントラクト、回帰分析、LLMの支援システム、データ基盤、SQL、擬似言語
- サンプルはイメージ共有用の資料で、本試験1回分ではない。科目Bは12問・科目A-2と合わせて120分の予定だが、2026年3月公表の検討状況に基づく予定値で変更の可能性がある。配点・合格基準・受験料は未公表
- 想定問題集と入門学習で演習を重ねる。全体像は高度情報技術試験の総合ページから確認できる